ファミリー用途に最適なバンコン/キャブコンと冷房装備の差異
家族全員で快適なキャンピングカーライフを実現するためには、車内の広さとともに冷房装備の充実度が極めて重要になります。バンコンやキャブコンといったミドル〜大型のキャンピングカーでは、夏場の長距離移動や宿泊時の室温コントロールが安全・快適な旅を左右するため、それぞれの冷房性能と装備の違いをしっかり把握しておく必要があります。
まず、バンコン(バンコンバージョン)は、ハイエースやキャラバンなどの大型バンをベースにしたモデルで、車内は比較的広く、装備の自由度が高いという特長があります。冷房装備としては、100V家庭用エアコンを搭載するケースが多く、インバーターやリチウムイオンバッテリーと組み合わせて使用するのが一般的です。広さに応じて冷却能力の高いモデルを選ぶことで、家族4人でも快適な室温を保つことができます。
一方で、キャブコン(キャブコンバージョン)は、トラックのキャブ(運転席部分)に専用のシェルを架装したモデルで、内部空間はバンコンよりもさらに広く、家庭に近い快適性が得られます。そのぶん室内空間も冷却対象としては広くなるため、エアコンの冷房能力は最低でも2.2kW(6畳用相当)以上が望ましく、断熱性能や換気システムの設計も含めたトータルの空調設計が不可欠です。
特にファミリー向けで注目されるのが、2台エアコンの搭載が可能なキャブコンの存在です。例えば前方の居住空間と後部ベッドスペースで別々にエアコンを稼働させることで、寝る時と食事の時で異なる温度管理ができ、子どもや高齢者にも優しい空間づくりが可能になります。
ファミリー向けの代表車種の冷房装備と対応人数、エアコン搭載状況の比較
| 車種タイプ |
代表モデル名 |
エアコン搭載状況 |
適正人数 |
冷房能力(kW) |
特徴 |
| バンコン |
AtoZ アミティ |
家庭用AC1台(100V) |
2〜4名 |
約2.2kW |
コンパクトでも断熱・冷房設計が充実 |
| キャブコン |
トイファクトリー BADEN |
家庭用AC2台+ルーフファン |
3〜5名 |
約2.2kW×2 |
リアベッドとダイネットで空調ゾーン分離可 |
| キャブコン |
ナッツRV クレア |
家庭用AC1台(オプション) |
4〜6名 |
約2.8kW |
大型断熱ボディで家族向け設備が豊富 |
このように、バンコンとキャブコンでは冷房設備の選択肢や搭載方式が異なり、使用人数や旅行スタイルに応じた冷却計画が重要になります。特に真夏の長期旅行では、断熱材の性能やエアコンの設置場所(後部設置、天井設置など)によって快適性が大きく変わります。
また、小さなお子様がいる場合は「空気の循環効率」と「静音性」にも注目すべきです。ルーフファンと併用した空調制御や、窓のUVカットフィルムなどと組み合わせることで、冷房の効率を高めつつ電力消費も抑えることが可能です。
室外機・配管の配置と「静音性・振動性」に関する重要ポイント
キャンピングカーに家庭用エアコンを搭載する際、見落とされがちなのが室外機や冷媒配管の配置、そしてそれらがもたらす振動や騒音の問題です。特に就寝時やエンジン停止中にエアコンを使用する場面では、「静音性」と「振動抑制」が快適な空間づくりに直結するため、事前の設計段階で十分な検討が求められます。
まず室外機の設置場所ですが、最も一般的なのは車両後部の床下、リアキャリア上、または屋根上への取り付けです。それぞれの設置方法には利点と注意点があります。
| 設置位置 |
メリット |
注意点 |
| 床下 |
重心が低く走行安定性が高い |
水はね、泥汚れ、整備性の低下 |
| リアキャリア |
冷却効率が高く、メンテナンスも容易 |
車体全長増加による車検対応、後方視界の制限 |
| 屋根上 |
放熱性能が最大、日陰確保しやすい |
重心が上がり、風の影響を受けやすい |
特に夜間の使用を前提とする場合、室外機の「騒音レベル」は最優先のチェックポイントです。現在、家庭用エアコンの室外機の静音仕様モデルでは稼働時の音圧レベルが40dB以下に抑えられたものも登場しており、キャンピングカーへの搭載事例も増えています。さらに、室外機と車体の接合部に制振ゴムや防振マウントを挟むことで、走行中および停止中の共振を大きく軽減することが可能です。
次に配管設計においては、冷媒ホースの取り回しがエアコンの効率に直結します。直線的な配管は冷媒の流れをスムーズにし、冷却効率が向上しますが、限られたスペースの中ではどうしても曲げが必要になる場面もあります。このとき、急角度での曲げや長すぎる配管は冷媒圧損を増やし、冷房性能を低下させる原因になります。
加えて、配管の貫通部分には断熱材を巻き付けることで、結露や熱損失を防ぐことができます。結露による水漏れは、車内の木製家具や電子機器に悪影響を与える可能性があるため、配管スリーブのシーリング処理も必須です。
エアコンの性能は、冷却能力そのものだけではなく、「静かに快適に使えるかどうか」も含めて評価される時代です。防音・防振の工夫まで丁寧に対応できる業者の施工実績を確認することが、失敗しない選択につながります。